そろばんネタ帳

そろばん四方山話

005)雲州名工との対話 第1話

年初めに雲州(島根県奥出雲町)に出かけました。あいにくの大雪で、交通の便は大混乱でしたが、そのかわり、雲州算盤の名工2代目雲文さんとじっくりお話ができました。2代目雲文さんは、お互いに先代からの長~いお付き合いです。その対話の中から、印象に残ったお話をいくつか紹介させていただきます。

[雲州そろばんとたたら製鉄について]

奥出雲町が「雲州そろばん」と「たたら製鉄」の特産地であるのは偶然ではありません。この辺り一帯は、風化した花崗岩の中から砂鉄が採れました。日本刀の原料となる良質な玉鋼(たまはがね)は、この砂鉄と良質な木炭による「たたら製鉄」により、作られました。

玉鋼を利用した上質の刃物を使える環境にあったことが、雲州そろばんが[黒檀・紫檀・黒柿・古梅など]の硬くて緻密な唐木材を使用した高級そろばんを作る技術を 育んだと言えます。一流のそろばん職人は工具を自分で創り出しました。鋼を焼き戻したり、焼入れしたりすることは日常茶飯事であったそうです。

名工の使い込んだ工具をご覧下さい。  

職人たちの工具
    
名工たちのカンナ

紀元735年の『出雲国風土記』には、「奥出雲の鉄は道具を作るのにちょうどいい」と記載されています。奥出雲の産する鉄は、明治20年代でも日本の総需要の半分以上を満たしていました。山奥の辺鄙な土地柄と思われがちなこの奥出雲の地が、古来から大きな経済力を有し「そろばんの生産地と消費地という両面の機能」を持っていたことを再確認すべきでしょう。~続く~