そろばんネタ帳
そろばん四方山話
039)「そろばん~ちょっと良い話 1」
随分前の話になりますが、地方に営業に行って立派な会長室に通して頂きました。随分ご年配ですが、カクシャクとして凛としたお姿が印象に残っています。
「そろばんのメーカーです」と私が自己紹介をすると、おもむろに机の引き出しから「古い骨玉そろばん」を出して来られました。それも、右半分は壊れて無くなっており、その部分をヒモで縛ってありました。
私が軽い気持ちで「会長、今もそろばんをお使いのようですので、ぼちぼち新しいそろばんに買い換えられたら如何ですか?」と営業トークをすると、いきなりお叱りを受けました。
「君、このそろばんは、この会社を家内と二人で創業してから、ズーと苦楽を共にしてきたんだ。資金が足りなくて、夜中まで、何度も何度もこのそろばんを置き直したことも数えきれない。」
「今でこそ、こんなビルになって、息子が会社を継いでくれているが・・。」
「このそろばんに込めた想いは、お金では換えられないものだ。まさしく、自分の宝物だよ・・・。」
私は、自分の軽はずみな言葉をお詫びすると共に、普段扱っているたくさんのそろばんの一つ一つに、お客様の生活がかかっていることを実感しました。
前項の「古い骨玉そろばん」について書いていると、その時の爽やかな感動が、今、懐かしく蘇りました。
以上