そろばんネタ帳
そろばん四方山話
020)「数」の日本史~我々は数とどう付き合ってきたか~
「数」の日本史 伊達宗行著 日本経済新聞社刊
縄文時代から21世紀まで、幅広い観点から「数」を捉えて、分かりやすい言葉で解説されている素晴らしい著書だと思います。
かいつまんで、紹介させてい頂きます。
・数の知識は古来より人間社会においてきわめて普遍的なものであり、文化・文明の欠かせぬ尺度と位置づけられる。にもかかわらず、この視点から日本史を通観した本は少ない。いわゆる歴史家は数学に興味を持たない人が多く、科学史家はそれぞれの専門を守っている。
・約4000年前の縄文時代・三内丸山遺跡の大型掘立建物は、直径1m長さ10~20mを超える巨大なクリの木を6本規則正しく立てた形跡がある。その柱と柱の間隔は4.2mで、縄文尺(35cm)の12倍にあたる。現在も世界に残っている12進法が縄文時代にあったのではないか、と推測はできる。
・今日の日本語において、数詞にはふたつの系列がある。「ひとつ、ふたつ、みっつ・・」という古代数詞またはひふみ式と、「いち、に、さん、・・」という現代数詞である。後者は漢字・漢語と共に入ってきたことは明らかだが、前者はどのようないきさつで成立したかについては定説はなく、その成立時期も不明である。
・[九九の東西] アメリカの入学最難関といわれる大学で、38%の学生が九九が言えない、と答えたという。日本の小学生は数か月でほぼ全員がマスターするのに対し、アメリカでは1~2年かけてこのありさまである。
答えは簡単である。日本人は調子を付けて歌うように覚えるのに、欧米では散文的に並べるだけで日本のような暗記物ではないからである。
日本の初等数学教育が世界一である秘密の一部が実はここにある。
・[暗算の東西] 外国で買い物をしておつりを受け取ると、小銭から先に出てくる。これは、引き算の暗算順序が違う為である。日本人は長いそろばんの経験から、大きい数から先に引いてゆく。しかしそろばんの無い欧米では、筆算の計算順を使う。したがって計算の済んだ下の桁からおつりが出てくるのである。
・その他「塵劫記」や「和算」の解説に多くのページを割いている。 以上