そろばんネタ帳

そろばん四方山話

011)「異端の数ゼロ」<数理を愉しむ>シリーズより

異端の数ゼロ
 「異端の数ゼロ」 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 

著者:チャールズ・サイ フェ 訳者:林 大  早川書房発行<数理を愉しむ>シリーズ

※当HPの他の項でも記載していますが、紀元5世紀ころにインドで発明された「ゼロ」がヨーロッパに伝わって、なおかつ普及するようになるのは14世紀になります。「何故このような長い期間がかかったのか?」、私にとって大きな謎でしたが、本書はこの部分を明快にまた面白く説明してくれています。この分野に興味をお持ちの方には、お勧めです。

 

【内容を一部紹介します】

・ゼロが古代に生まれ、東洋で成長し、ヨーロッパで受け入れられるために苦闘して、西洋で台頭し、現代物理学にとって常なる脅威となるまでの物語だ。ゼロを理解しようとし、この神秘な数の意味をめぐって争った人々-学者と神秘主義者、科学者と聖職者-の物語である。西洋世界が、東洋からきたある概念から身を守ろうと(時として暴力的に)試み、失敗した物語だ。

 

・数学的思考のはじまりはヒツジを数えたい要求と、所有物や時間の経過を把握する必要にあった。こうした作業のどれにもゼロは必要ない。

 

・ピュタゴラス、アリストテレス、プトレマイオスが創造したギリシャ人の宇宙はギリシャ文明が崩壊した後も長く生き延びた。その宇宙には無などというものはない。ゼロなどない。そのために西洋は2000年近くゼロを受け入れられなかった。

 

・アリストテレス哲学が長年にわたって存続したのは、神の存在を証明したためである。

 

・ギリシャと違って、インドには無限なるものや無への恐れはなかった。インド人は無限と無を受け入れたのだ。

 

・7世紀、 ローマは滅びて西洋世界は衰えていたが、東洋世界は栄えていた。イスラムはインドからゼロを採り入れた。やがて、西洋がイスラムからゼロを採り入れることになる。     以上