そろばんネタ帳

そろばん四方山話

008) 「江戸の科学力」のご紹介

江戸の科学力
珠算史研究学会の大垣先生から、この本をご紹介頂きました。

「図説 明治の近代化につながった 江戸の科学力」 監修:大石 学 発行:学習研究社本体1,400円

もちろん「江戸の数学」欄では、そろばんや和算書の紹介がありますが、大石学 東京学芸大学教授の序文は、新鮮な印象がありましたので、抜粋して紹介させていただきます。

「江戸時代はこれまで、世界の2度のグローバリゼーションの間にあって、外国との通商を極端に制限したいわゆる「鎖国」体制のもと、停滞的・後進的な時代(封建時代)として捉えられてきた。しかし、近年、江戸時代の発展的要素が注目され、近代日本を準備した時代(初期近代)として捉えられるようになっている。」

「幕末期に日本を訪れたトロイ遺跡の発見で知られるドイツ人シュリーマンは、「この国は『平和』で、総じて満足しており、豊かさに溢れ、極めて堅固な社会秩序があり、世界のいかなる国よりも進んだ文明国である(シュリーマン日本中国旅行記)」と、江戸の平和と文明を高く評価している。」

【江戸時代の数学】

日本国内で独自な展開を見せた算数、数学を和算という。当時の計算は一般に「算木」と「算盤」を用いて行った。

「和算家で最も古いのは『毛利重能(シゲヨシ)』である。『割算書』は生活上必要な計算方法をまとめた数学書。京都にあった重能の塾から多くの弟子が育った。」

「その弟子の1人、京都の吉田光由(ミツヨシ)は、中国の数学書『算法統宗』を学び、それをもとに『塵劫記』(ジンコウキ)を出版した。これが大売れし、京都の町には数学塾が乱立したともいわれている。表現が平易で、生活に必要な数学がひと通り載っていることが人気を集めた理由であった。」

中略

「こうした数学熱から、江戸時代の庶民の教育レベルや向学心の高さがうかがい知れる。」