そろばんネタ帳
そろばん四方山話
001)そろばんと「数」の歴史
そろばんの歴史をさかのぼって行くと、
「数」というものに対する人類の歩みをひも解くことになります。
例えば、羊飼いが羊を数えるのに、始めは手足の指や小石を使っていました。
10頭いれば10個の小石、22頭なら22個の小石を使っていましたが、
面倒なので、大きな小石は10頭を表わすこと決めると便利になりました。
さらに賢い羊飼いは地面に何本か線を引き、その上に小石を並べて、
同じ小石でも隣の線の上にある小石は10を表わし、
さらに隣の線の小石は100を表わすようにするともっと便利になりました。
位取りの概念の始まりです。
[その小石をカルクリとよび、現在のcalculate(計算する)語源となっています]
人類は長い間、様々な形態のそろばんによって計算を行い、
その結果を記録する為にのみ数字を用いてきました。
漢数字やローマ数字・ギリシャ数字は主に記録を目的としていました。
数字に位取りの概念が入る為には、「ゼロの発見」が必要でした。
「ゼロ」は5世紀頃のインドで発明されましたが、
その後アラビアを経てヨーロッパへ伝わり、
一般に普及するのは14世紀になります。
そろばんでは、紀元前に使われ出した「位取りの概念」が、
数字として利用されるようになるまでに、何千年という年月が必要だったのです。
0から9までの10個の数字の反復使用だけで、
膨大な量を表わすことができる「位取り記数法」の概念は、
実はそろばんから生まれたものだったといえるでしょう。