そろばんネタ帳

そろばんと教育

021)みんなで歩いた70年 金本和祐先生

金本和佑先生 全大阪について

 

珠算専門誌「サンライズ」 2016年11月号に、金本和祐先生の「みんなで歩いた70年」全大阪大会70周年の投稿が掲載されています。素晴らしい文章ですので、皆さんにも紹介させていただきます。

金本先生は珠算界の全てのタイトルを複数回取得された、珠算界のレジェンド(伝説)的な存在です。

きっと、珠算競技大会に無縁の方々にも、珠算競技の妙味を感じ取っていただけるものと思います。

長くなりますが、下記抜粋させていただきます。

「昭和50年。当時小学4年生だった私は、第29回大会の種目別決勝を見学席から眺めていた。大会には出場していない。   <中略> 見学席の一番前に座った私は、決勝席で計算する選手たちを夢中で見た。いや、見た、という言葉だけでは全く不足で、心を射抜かれ、体が震えた。そして、すぐに帰って練習したくなった。練習してただちにどうなるものでもないことは分かっていたが、それでもその場にジッと座っていられないほど心がざわついた。

私が1級の問題を計算するために使うそろばんが、選手たちが手にすると別のものに変わっている。そろばんが計算をするためだけの道具ではないのである。何といえば良いのだろうか。選手が躍動するために必要なアイテムとでもいえばいいのだろうか。今風に言えば、「そろばんは自己を表現する手段」ということなのか。」      <中略>

「乗除の流れるような指さばき。手首の上下動はなく、そろばんと指の感覚は限りなく狭く、玉を弾いているか答えを書いているかのどちらか以外に費やす時間はない。みとり算の視線の動き。暗算で3口ずつを素早く計算するかのような小刻みな首の上下動を見せる選手や、ゆったりとした上下動で一気に下す(計算する)選手。答案用紙と問題用紙との間を行き来する目の動きと手の動きが一致しない、すなわち、答えを書く部分は一瞥するだけで、視線は次の問題に移る様子。まるで、折りたたんだ紙片をパラパラと親指から落としていくような様でめくる伝票。 <中略> まるで、演劇そのものであった。」  <後略>

一般社団法人大阪珠算協会 全大阪委員長 金本和祐