そろばんネタ帳

そろばんと教育

003)脳が10歳若返る「そろばん脳トレ」その1

脳活性には指を動かすのが有効で、そろばんを弾き暗算をすれば記憶力・集中力は向上。

諏訪東京理科大学教授 篠原菊紀先生

 

脳には、運動野と呼ばれる場所があり、私たちの運動をコントロールしています。なかでも、手に対応した運動野は非常に大きな部分を占めていて、手を動かせば動かすほど、その領域も大きくなります。さらに脳とって重要な働きをするのが手の指です。手の指を動かすだけで、脳の広い範囲が活性化されるのです。 

 

興味や関心を持ちながら、一生懸命に指を動かしたときに、脳は活性化するのです。気が進まないまま行っているときには、脳は活発に働きません。

 

そうした意味で脳を活性化させ、記憶力や集中力を高めるのに有効なのが、そろばんです。

 

先生が出す問題を聞きながら行う聞き取り算は、聴覚を使います。また、問題を見ながら行う見取り算では、視覚を用います。そのため、脳の運度野ばかりでなく、視覚野・聴覚野といった部分も使われるのです。

 聞き取り算にしても見取り算にしても、数字を瞬間で記憶して、そろばんをはじかなければなりません。そのため、記憶力の向上につながり、暗算の能力もついてくるのです。

 

電卓を使うときも手の指を使いますが、数字を瞬時に記憶することはないため、脳トレーニングにはなりません。そろばんは、手の指ばかりでなく、目や耳を使って、大がかりな脳のトレーニングが行われるのです。

 

そろばんを弾いたら脳の血流が増えると実験で分かり、認知症予防にも期待大

そろばんを弾くことによって、脳の血流が増加して活性化することは、私たちが行った実験で確認しました。

 

NHKの番組では、そろばんの高段位を持つ人と、そろばんの経験のあるアナウンサーに実際にそろばんを弾いてもらい、脳活動を観察しました。すると、二人とも脳が活性化していることは確認されたのです。ただし、高段位の人には、簡単な問題だったらしく、アナウンサーの方が活性の度合いは大きくなっていました。つまり、しばらくそろばんをやっていなかった人の方が、そろばんによる脳活性の効果が上がるということです。

 

そろばんをはじいて脳が活性化すると、次の段階では脳の沈静化が起こります。このとき、脳の神経細胞が活発に働いたり、脳細胞を育てる物質が分泌されたりします。その働きによって、記憶力や集中力が高まるのです。

出典:『健康365』 2008年11月号 発行元 ㈱エイチアンドアイ

指導者紹介

篠原菊紀(しのはらきくのり)

諏訪東京理科大学教授

1960年長野県生まれ。東京大学大学院教育学研究科修了(健康教育学)。専門は脳システム論、健康教育学、精神衛生学。主な著書に、『未来の記憶のつくり方』(化学同人)『不老脳』(アスキー新書)など。